“Direct to Fan” 幸福な時代をともに歩むアスリートたちへ

“Direct to Fan” 幸福な時代をともに歩むアスリートたちへ」より転載。(山内一樹)




20歳の頃から経営する大学スポーツチャンネル社も12期目に突入。


私の仕事としては、主にリーグ・クラブのSNSマーケティング支援業や、オリンピアン・パラリンピアンなどトップアスリート達のSNSコーチ業、渋谷をホームにJリーグ参入を目指すTOKYO CITY F.C.の社長業(大学スポーツチャンネル社の子会社として法人化)といった業務を中心に仕事しているのだが、スポーツビジネスの会社を経営して12年目のいま、これまでと違った「風」を感じている。




2020年代のスポーツシーン


アスリートにとって追い風が吹いている。それも強烈な。


そう遠くない未来、AI(人工知能 / Artificial Intelligence)の普及やBI(ベーシックインカム / Basic Income)の導入などにより、可処分時間の大幅な増加が見込まれている。そんな小難しい話をせずとも、「働き方改革」に伴う労働時間の短縮は身近なトピックであるし、「MaaS」による移動の時短化、「IoT」による家事の時短化などは分かりやすい。


要するに、人類は過去に類を見ないほどの“自分の時間”を手にする


自分の時間(可処分時間)が出来た時、人々はその時間をどのように使うだろうか?スポーツエンターテインメント市場が急拡大している背景はそんなところにもある。


スポーツにとって、アスリートにとって追い風が吹いている。



ミレニアル世代・Z世代における価値観の変化


更なる可処分時間が出来た時の人々の消費行動は、ただ自らの欲求を満たすためのみに、ただ自己満足のためのみに行われるのだろうか?否、消費行動における価値観のパラダイムシフトは既に始まってる。


A.T.カーニーの『未来の消費者に関するグローバル調査』よると、未来のマーケットは「信頼・影響力・パーソナライゼーション」という3つの原則により成長するとされている。詳しくは下記レポートを見て欲しいが、消費者からの信頼が薄い企業やブランドは、勝負の土俵に上がることさえ難しくなると見られている。パワープレイで消費者をコントロールできる時代ではとうに無くなっている。


A.T. カーニー 未来の消費者に関するグローバル調査 - Japan - Kearneyjp.kearney.com


レポートより抜粋した下の図・表は、「信頼」をテーマにしたものだが、特に注目したいのは若い世代(ミレニアル世代やジェネレーションZ)が、環境に優しいブランドや社会問題に高い関心を示すブランドを探すことに積極的ということだ。



彼らは、そうした商品であれば「プレミアムを払っても構わない」とさえ述べている。




(A.T.カーニーの『未来の消費者に関するグローバル調査』より)


若い世代は、社会にとって意味のあることを期待して消費行動を取るようになっているし、所有物でなく行動こそが自らを表現している、と考える。


「自分が何を持っているか」でなく、「自分は何をしているか」「自分がどういうものに興味を持って活動しようとしているか」というように、行動を通して個性は形作られる、という考え方が基本だ。だからモノを買うときでさえ、プロダクトそのものの良さや価格だけでなく、「誰が作っているのか」「どういう大義のもとに作られているか」「どう社会に影響を与えるか」といった、モノの裏側にある繋がり・ストーリー・メッセージを重要視する


つまり、若い世代は「自らの行動が社会にとって意味があることを期待し、その想いがベースとなって消費行動をする」ようになっている。消費行動に精神性を見出すとも言える。


このような消費に対する価値観のパラダイムシフトは、可処分時間の使い方を単に時間を浪費するものに用いるのでなく、意味ある消費行動に活用する傾向が高くなると予測される。


このトレンドはスポーツにとって、アスリートにとって更なる追い風となって背中を押してくれる。


なんたってスポーツは、人と人を繋ぐ架け橋であり、筋書きのないドラマ・ストーリーの宝庫であり、そして何より社会課題の解決に繋がる大きな可能性を秘めているからだ。




アスリートの新たなる稼ぎ方


現にそんな時代の流れは、スポーツ・アスリートの在り方とマネタイズ手法を変えつつある。それはまさに、ニューアスリートというような存在だ。


「アスリートのマネタイズ」という観点に言及するとき絶対に外せない選手は、CR7ことクリスティアーノ・ロナウド選手だろう。彼のブランド「CR7」では下着・靴下といったアパレルから始まり、香水、靴、フィットネスさらにはホテルチェーンにまで及ぶ。また世界で最も多くのフォロワー(2億人)を抱える彼のInstagramにおける投稿では1投稿につき1億円を稼ぐとも言われている。



2億人突破! クリスティアーノ・ロナウド、インスタグラムのフォロワーで新記録樹立


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CR7のこれら取り組みは、フットボーラーとして頂点に立った彼の競技面での実績が大きいことは言うまでもないが、同時に彼のアスリートとしてのストイックな姿勢や言動が自分らしさ(独自の世界観)をつくり、その世界観・ストーリーに多くのファンが共感することで事業にドライブが掛かっていることは見過ごせない。



日本人アスリートでは長友佑都選手の取り組みも、彼ならではの世界観やストーリーを活かしたビジネス展開を行なっている。

長友選手といえば強靭なフィジカル・ストイックといったキーワードが連想されるが、そのような世界観を体現したプライベートジムやレシピサービスを展開している。



CUORE ONE


ABOUT US/長友佑都が実践、糖質管理と脂質(ファット)中心の献立・レシピ



このような自身のブランドやサービス・施設の立ち上げまでを行うことが出来るアスリートは現状では限られているかもしれないが、今後同様の展開は広がりを見せる可能性が高い。


アスリートが今まで以上に、自身のスピリットやストーリーを発信することで、独自の世界観が形成され、ファンとのつながりを深め、「一緒に夢へと向かい進んでいく体験」の創出が容易になった。それはリアルな場のみでなくオンライン上でのマネタイズチャンスの増加を意味する。


例えばバレーボール男子日本代表のキャプテンである柳田将洋選手は、自身の日々を動画で伝えるオリジナルコンテンツの提供を開始した。



「The Moment」プロバレーボール選手柳田将洋 映像コンテンツプロバレーボール選手柳田将洋は現在、ドイツUnited Volleysにてプレーをしています。彼のバレーボール選手としてのcommunity.camp-fire.jp



これらアスリートの取り組みは、アスリートがファンと直接つながり、コミュニケーションが取れるようになった時代の象徴と言える。ファンとのつながりを深め、ファンとともに日常生活から「一緒に夢へと向かい進んでいく体験」がビジネスへと成立し易くなった。


いま小売業界では、ブランドの世界観(メッセージ)を明確に打ち出し顧客と継続したコミュニケーションを取ることを強みとするD2Cブランドが市場を席巻しつつあるが、アスリートにおいてもこのトレンドは示唆に満ちている。


“Direct to consumer”(D2C)ならぬ、“Direct to Fan”(D2F)とも言えるようなニューアスリートたる取り組みは、前述してきた可処分時間の拡大や消費における価値観変容といった時代背景もあり2020年代前半において爆発的な広がりを見せるだろう。


“Direct to Fan” アスリートにとって幸福な時代の到来だ。



D2Fモデルの肝


「D2Fモデル」と命名した事業モデルを考えるにあたり、D2Cモデルについて整理をしておこう。




D2Cビジネスにおける3つのポイントを挙げるとすると上記のようになる。そしてこれらを基にアウトプットされたそれぞれのプロダクトは、プロダクトそのものの良さや価格だけでなく、繋がり・ストーリー・メッセージがより重要視されて購買される。つまり消費者はプロダクトを購入している感覚ではなく、世界観・体験を購入しているのだ。


肝心なのは「ブランドの世界観」。そのブランドは何を目指し、なぜ作られ、何を変えようとしているのか。要するに、『らしさにファンがつく』



「顧客と直接つながるだけが本質ではない」D2Cを再定義して見えてきた顧客体験の重要性 #CXDIVE | XD(クロスディー)


D2Cとは?顧客と企業の関係性を密にしたビジネスモデルとその事例



これをアスリートに置き換えたとき、彼らの“らしさ”は大きなブランドとなる。ファンとして「一緒に夢へと向かい進んでいく体験」は大きなビジネスとなる可能性に満ち溢れている。


D2Fの肝はそんな「自分らしさ」にあると言えよう。自分らしさを突き詰め、それを拡張していくことがアスリートの新たな稼ぎ方「D2F」モデルへとつながっていく。



いかにして“自分らしさ”を伝えるか


では自分らしさとはどうすれば伝えられるのか。どうすれば自分らしさにファンがつくのだろうか。


一にも二にも、自分の想いを言語化しなければ始まらない。SNS時代において、自らをどうSNSで語り、自らをどうSNSで語ってもらうか、言語化をするためには自己分析が不可欠だ。アスリートとしての自分らしさを整理する必要がある。





ポイントは「心・技・体」をもとに自分らしさを整理すること。これらを整理して発信することで、自分らしさが明確となり、アスリートの世界観が出来上がってくる。


具体例を交えながら見ていこう。



これらの発信はあくまで一例に過ぎないが、アスリートとしての考え方や取り組み・哲学に関する発信を続けることで外から見える「自分らしさ」が形成されていく。SNSでの発信に限らずメディアへの対応やファン対応についても同様の一貫性を持った行動が「自分らしさ」を深め、ファンの定着へと繋がっていく。


SNSの活用術は本記事の主題ではないため、これ以上の詳細は別記事とするが、アスリートとしての自分らしさの次は、アスリートとしてに留まらない「人としての自分らしさ」。その「人としての自分らしさ」と「世の関心ごと」との接点の最大公約数を見つける作業をすると、一気にブレイクスルーへと近付く。



ゲームチェンジはもう始まった


これまでに述べて来たD2Fモデルを整理すると下図のようになる。



D2Fの肝は「自分らしさ」だ。自分らしさを突き詰め、それを拡張していくことがニューアスリートの新たな稼ぎ方「D2F」モデルに繋がっていく。


アスリートにおけるビジネスモデルが変わった。ゲームチェンジが既に起きている。


これはYoutuberのマネジメント会社として国内最大手であるUUUM社のIR資料だが、アスリートにおいても同義のことが言えよう。




IR情報 | UUUM株式会社(ウーム株式会社)



SNS時代の2010年代に入り、アスリートはインフルエンサーとしてのメディア的バリューが更に高まってきたが、2020年代はそれに留まらない“アスリート経済圏”たる多様なビジネス展開が進むだろう。



ただ断じて間違えていけないのは、 「SNSでフォロワーを増やしてグッズを売ろう」と短略的に進まないことだ。


D2Fモデルではコンテクスト(文脈)が無いと成り立たない。


そしてそのコンテクストは、競技に本気で打ち込み、競技での成長があるからこそ際立ち、差別化され、オリジナルなものとなる。これは大前提であり、逆に言うとスポーツが持つ予測不能なリアルタイムストーリーは数多いる表現者(クリエイター)の中におけるアスリートの特異性・優位性にも繋がる。




可処分時間の増加といったトレンドはスポーツを含むエンターテインメント産業の拡大に間違いなく繋がり、若年層の消費における価値観のパラダイムシフトといったトレンドは社会と接続されたスポーツ産業の拡大を大きく後押しする。


このような時代の流れとともに、テクノロジーの発展が進んだ2020年。


東京オリンピックもやってきて、日本においてスポーツが最も注目されるこのタイミングを「幸福な時代」と言わず、いつそう言おうか。




“Direct to Fan” 幸福な時代をともに歩むアスリートたちへ、


ゲームチェンジはもう始まった。2020年代を駆け抜けよう。



少しでも興味を持ってくださったアスリートの方はお気軽にご連絡を頂けると嬉しいです。




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